インターネットによって物理的=時間的に分断されているわたしは、アカウントという仮想でひとつにまとめられる。卒論を書き終えたという言葉をツイッターに放つ。おめでとうおめでとうとの返信の山。わたしがそのようなひとびとのネットワークの中にいたんだという事実をはじめて明瞭に知らされる。それらのネットワークは本来は遠く近く乖離しているのだが、インターネットというインフラストラクチュアは人格の一元性を心から信じているので、そのイデオロギから強引にひとつのわたしが顕現される。ひとつひとつに返信し、さらに返信の言葉がべつのネットワークの人によってお気に入りに入れられる。それは、インターネット上の振る舞いにおいて、わたしがなるたけ非操作的に自然的にことをなそうとした帰結でもあるのだけれど、そうした一連の出来事が、まさしくひとつのわたしという虚構を強力にわたしに働きかけて、けっこう新鮮なおどろきがある。

ほんとにね。

 

奴隷ハーレムを読み進めている。

読者の視線に耐えうるという意味で、たしかに作品世界のシステム、そのあり方は感嘆に値するところがある。

  1. 主人公はチートによってアイテムを購入する時に30%割引のボーナスが得られる。
  2. しかし奇妙なことにしばしばそのボーナスが無効になる時がある。世界の謎。
  3. 物を売ることで主人公が商人ジョブを手にいれ、カルクという計算を自動で行うスキルがあることを知る(224×365と思うとすぐさま81760という数字が頭に浮かぶ)。
  4. ある時、ひとつのアイテムを購入する時にボーナスが効かないことがわかる。
  5. しかし、冒険者ギルドで女性店員から薬を買う時は複数でもボーナスが効かない。
  6. その女性店員が銀貨と銅貨といった複数の貨幣を混ぜての支払いを拒否。どうやら彼女は計算ができないらしい。
  7. 彼女が計算できないから、割引ボーナスが効かないのでは。計算できないのに3割ボーナスなんてはじき出せないだろう。
  8. では、なぜ他の人ではボーナスが効くのか?
  9. カルクというスキルがポイントなのではないか。この自動計算にボーナスは直接働きかけるのではないか。
  10. だとしたら、ひとつのアイテム購入でボーナスが効かないのも理屈が通る。ひとつだけなら計算しないからだ。世界の謎が解ける。

かなり世界のシステムに関しては複雑なことをやっている。理性の絶対的信頼。まさに近代である。

そして言うまでもないことだが、理性は倫理を必ずしも意味しない。なろう世界にカントはいないのだ。ま、マキャベリさんって感じでもないけど。

だから、奴隷という契約がある。それは排除しない。

ちなみにようやく書籍化された。

異世界迷宮でハーレムを 1 (ヒーロー文庫)

異世界迷宮でハーレムを 1 (ヒーロー文庫)

ロクサーヌのデザインを見て、「苦肉の策」という言葉が浮かぶ。姫とメイドの中間のようなデザイン。奴隷はまだ属性としてポップに記号化されていない、その折衷感。絵師はフルメタの人なのね。

ようやくロクサーヌを買受けるとこまで読んだ。ここまでで文庫1冊の分量。人間関係とはなんだったのか。