風景画の誕生展を観にいった。割とそんなに人はおらず、快適。

宗教画の背景から徐々に独立していって、とうとう人間のいない純粋な風景画が誕生するというプロセスで展示していて、なかなか素晴らしかった。風景画の技術的なあるいは題材的な豊かさというのは近代人の我々からすると明らかであって、絵を見るという快楽からすると風景がどんどんと肥大化していくのはほとんど自明のように、見える。カメラオブスキュラで描いた絵なんかはもう、あまりにもわかりすぎる。

だからむしろ宗教画のほうがよく考えるとむしろインパクトがある。聖母子像とか東方三博士とか聖ヨハネとかの主題の背景の風景が、解説によれば当時の最新式の船引き上げ装置だったり、当時のオランダの都市だったりで、その時空間の完全な無視というのは見れば見るほどヤバイ。ジャガイモ警察を素手で殴るような強さがある。オークと姫騎士の背後にスカイツリーがあってなおかつ純粋な中世ファンタジーがあってもいいのだけれど、そんなことがありえないのはやはり我々が近代人を捨てきれないのだとひしひしと思い起こさせる。知識だけが民衆の武器なのだ。

あと。このコレクションの持ち主だったハプスブルク家のヴィルヘルム大公がどのように絵を飾っていたかの図版があって、壁一面に一部の隙間もなくびっしりと絵画を並べていてその頭の悪さが最高に貴族って感じだ、という感じであった。